「アベック」の意味・語源は?
アベックは「恋人」や、「男女の二人連れ」を指す言葉です。
その語源となった言葉はフランス語の「avec」という前置詞で、英語の「with」と同じく「~と一緒に」という意味があります。
<用例>
フランス語の「avec」は必ずしも恋人同士でだけ使われるわけではなく、友達や会社の同僚、家族同士にも使われます。
日本に流入した際に意味が変わった「和製フランス語」といえるでしょう。
ちなみに、類義語として「ツーショット」があります。
これは1980年代にテレビバラエティ番組「ねるとん紅鯨団」で使われて流行しましたが、定着はせず死語になりました。
「アベック」はいつ流行したのか?
「アベック」が最初に使われ始めたのは1920年代です。
大岡昇平(仏文学者・小説家)が1968年の文芸春秋に掲載した「アベック語源考」という評論の中で、「アベックという言葉は昭和2年(1927年)頃に生まれた」と書いています。
1920年代、まだ珍しかった男女共学の学校の中で、腕を組んでイチャイチャする生徒同士を見て、当時全国的に流行していたフランス語を使って彼らを「アベック」と呼んだことが始まりだそうです。
「アベック」はそれ以来ずっと細々と使われてきたのですが、爆発的に流行り出したのは1960年代です。
そのきっかけはテレビ番組『アベック歌合戦(1962年10月~1968年3月)』。
この番組は男女のカップルが出場して歌を披露するという視聴者参加型の番組でした。
この番組の人気が出たことから、「アベック」は急速に若者の間に広まっていきます。
なお、この番組の司会であるトニー谷さんは「~ざんす」「あなたのお名前なんてぇの?」「おこんばんは!」など、当時の流行語をたくさん生み出しました。
「アベック」はもう死語なのか?
「アベック」は1970年代後半くらいまで使われていましたが、徐々に「カップル」という言葉に置き換わってきます。
きっかけの一つはテレビ番組「プロポーズ大作戦(1975年から全国放送開始)」のコーナー「フィーリングカップル5vs5」です。
もう一つは1978年に連載が始まった柳沢きみおさんの漫画「翔んだカップル」。
この漫画は後にドラマ化や映画化もされるほどの人気で、これらの影響で「カップル」という言葉が広がりました。
そして1990年代頃になると、恋人同士を意味する言葉として「カップル」が定着するようになりました。
「アベック」から「カップル」への置き換わりが進み、アベックは死語化していきます。
今では「アベックホームラン」がたまに出てくるくらいで、滅多に聞かない言葉になってしまいましたね。
ちなみに「アベックホームラン」は打者が連続してホームランを打つこと、もしくは人気のバッターが揃ってホームランを打つことを指しますが、当然ながら和製英語です。
英語では「back-to-back homers」と言い、打者が連続して打つ時だけに使われます。
世俗のアベック(死語)を妬む意思はさらさらないのだけど俺の体力的ぐええ度を減らすためにクリスマス中止しろと言いたい
— わいなぎ (@Ynagi_akz) December 21, 2022
「アベック」って、もうすっかり死語になっちゃいましたね(苦笑) pic.twitter.com/iEVTGhjMGU
— ぽんタブ │ NIPPON-BASHI SHOP HEADLINE │ 大阪・日本橋🍥 (@dendentown) December 15, 2022
余談:「アベック」という菓子パンがあります
兵庫県ではパンを半分に割って、クリームを多めに挟んで上にチョコレートをかけたパンを『アベック』って言うんですけど、これって兵庫だけですか??
— 赤穂の天塩【公式】🧂 (@ako_amashio) July 2, 2021
こちらはニシカワ食品という会社が作っている菓子パン「アベック」。
パン生地にカスタード風味のクリームを折り込んで焼き上げてから、さらにミルクホイップを絞ってチョココーティングしています。
発売は1980年代とのことなので、「アベック」という言葉が使われなくなってきた頃に登場したのでしょうか。
おはようございます!冬らしい寒さの火曜日です。アベックトーストで頭にエネルギー補給☺️ pic.twitter.com/kqxPAVJxpf
— 津田紗矢佳 (@sayapontenki) January 17, 2023
こちらは「アベックトースト」。
2種類のスプレッドが食パンに挟まれている菓子パンで、1970年代に発売されました。
定番の「イチゴジャム&マーガリン」の他に、「チョコ&ホイップ」や「メープル&マーガリン」など、さまざまな味が発売されています。
1970年代~1980年代にネーミングされた食料品がまだ残っているんですね。
「アベック」はこれからも使われ続ける言葉なのかもしれません。